数学I
箱ひげ図が散らばりを『5つの場所』で見せてくれたなら、分散・標準偏差は散らばりを『たった1つの数』で言い切る道具。平均のまわりにみんながどれくらいバラけているかを、比べられる数字にするんだ。データの分析でいちばん大事な、ばらつきのものさしだよ。
この単元でやりたいのは、『データがどのくらい散らばっているか』を1つの数で表すこと。中央値や平均は『中心はどこか』を教えてくれるけれど、それだけだと『ぎゅっと集まっているのか、バラバラなのか』は分からないよね。テストで平均点が同じ2つのクラスでも、みんな60点前後のクラスと、0点と100点だらけのクラスでは中身が全然違う。その違いを数にするのが、この単元なんだ。
手がかりになるのが『偏差』、つまり一人ひとりの値が平均からどれだけ離れているか。偏差が大きい人が多ければ散らばりは大きい。でも偏差はプラスとマイナスがあって、そのまま足すと打ち消し合って0になってしまう。そこで偏差を2乗して、平均から遠いほど大きくなる『面積』にそろえるのがカギだよ。
偏差を2乗すると、平均から遠い点ほど大きな正方形になる。この正方形の面積をぜんぶ平均したものが『分散』だよ。散らばりが大きいほど正方形が大きくなるから、分散も大きくなる。散らばり具合が、そのまま1つの数に化けるんだ。
ただ分散は『2乗した世界』の数なので、たとえば点数(点)を測っていたのに単位が『点の2乗』になってしまい、もとのデータと直接比べにくい。そこで分散の平方根をとって、単位をもとにもどしたのが『標準偏差』。標準偏差の帯を平均のまわりに描くと、その帯の幅が『代表的な散らばりの幅』になる。散らせば帯は広がり、集まれば狭まる。標準偏差はいちばん直感に近いばらつきのものさしなんだ。
散らばりを1つの数にできると、次の『相関』へ進める。2つのデータの関係の強さ(相関係数)は、実はそれぞれの散らばりを土台にして計算するからだよ。さらに高校の後半では『正規分布』という山の形を、平均と標準偏差の2つだけで表す。標準偏差はデータの分析ぜんたいを支える基礎になるんだ。
身近なところでは、テストの『偏差値』も標準偏差からできている。平均からどれだけ離れているかを、標準偏差を1つの目盛りにして測り直したものが偏差値なんだ。だから同じ80点でも、みんなの点が散らばっているテストと、ぎゅっと集まっているテストとでは、値打ちが違う。散らばりを数にする、というこの単元の発想が、そういう『公平な比べ方』を支えているよ。
『平均からの距離を足せば散らばりが出るはず』と考えて、偏差をそのまま合計してしまう人が多いよ。でも偏差は平均より上がプラス・下がマイナスで、必ず打ち消し合って合計は0になる。これでは散らばりが測れない。だから偏差を2乗して、上も下もプラスの値にそろえてから平均する、という手順になっているんだ。2乗は『マイナスを消すための工夫』だと思うと納得しやすいよ。
分散と標準偏差は『2乗する前か、平方根をとって戻したか』の違いだけで、別々の量ではないよ。分散を出したら、その平方根が標準偏差。順番は『偏差 → 2乗 → 平均(=分散)→ 平方根(=標準偏差)』と決まっている。標準偏差を求めたいのに分散のまま答えてしまう、逆に平方根をとり忘れる、というミスが起きやすいので、単位を意識するといいよ。もとのデータと同じ単位(点なら点)になっているのが標準偏差だ。
『分散が大きい=平均が大きい』ではないよ。分散・標準偏差が測るのは中心の位置ではなく、中心のまわりの散らばり具合。平均が同じでも散らばりは全然違うことがあるし、逆に散らばりが同じでも平均は違う。中心を表す量(平均・中央値)と、散らばりを表す量(分散・標準偏差)は役割がまったく別、と切り分けて覚えよう。データは『中心』と『散らばり』の2本立てで見るのが基本なんだ。